おまけ 二年後の二人
呼び止める声はいつもより多い。最後だからという理由が大半だろうが、中には以前見た気がする顔もあった。しのぶは全て早々にお断りを入れて校門へと足を向けた。
「せめてリボンだけでも……」
「すみません、迎えが来てますので」
廊下を歩きグラウンドを通るだけでも声がかかる。自分がそういう意味で目立っているのは理解してはいたが、姉たちが卒業してからはあの当時の騒動も知らない者が入学して来ていて、告白を受ける度に丁重に断るという作業は減らなかった。
だがそれも今日まで。まあ進学するしのぶはまだあるかもしれないが、入学する頃にはまた少し生活は変わっている。
騒がしい門前でひっそりと壁に凭れる姿を見つけた。近くで話している女子生徒たちが視線をちらちらと向ける様子も見え、昔よりもわかりやすく視線が向かっているのが少々面白くないが、どうせ今日しか来ないのだから諦めた。
「待って、胡蝶さん! 打ち上げだけでも、」
近くまで駆け寄ったしのぶに気づいて壁から背中を離し、笑みを見せた後呼び止めた生徒へ目を向けた。立ち止まった男子生徒と付近にいた女子生徒たちの視線が集まる中、しのぶは目当ての手を掴んで満面の笑みで男子生徒を振り向いた。
「すみません、結婚指輪取りに行くので失礼します!」
固まった周囲の生徒たちを置いて手を引っ張って学校を出た。校門を離れた頃悲鳴のようなものが聞こえ、二人同時に顔を向けた。
「……大騒ぎしてないか?」
「でしょうね。結婚するなんて言いませんでしたから」
責任の話は二年前には尾ひれがつくほど噂になっていたが、それを覚えている者はあまりいないのだろう。覚えていたとしてもまだ続いているとは思わなかったか。確かにしのぶは告白の断り文句も相手がいるからとしか言わなかったし、学生の交際はすぐ別れることも多いというのは聞いたことがある。
「大変そうだな」
「泣き縋られることはなくなってましたよ」
告白されることはあったのだろうと恨めしげな視線を向けて呟いた義勇に、それは普通にあったとしのぶは答えた。
彼には言わなかったが、割と頻繁に。進学すると更に交友関係は広がるだろうが、今までよりは落ち着くはずだ。指輪をつけている者に言い寄るなんてことは流石にないだろう。
「そっちこそ、聞かれたらちゃんと結婚してるって言ってくださいよ」
「まず聞かれない」
「いや、聞かれるはずです。夕飯を賭けても良いですよ」
「お前こそ、水以上に新歓に気をつけろ」
しのぶの確信した言い方に眉を顰めた義勇は、面倒にでもなったのか首を振ってしのぶのことへ話題を逸らした。
新歓。新入生歓迎会というものか。サークルだとかゼミの仲間内でやるものだとか色々あるらしいが、しのぶはサークルに入る予定はない。外には気をつけるべきものが多いのだから、できるだけ早く帰りたいところである。
「義勇さんとこで何かありました? 聞いてませんけど」
「ない」
本当かと疑うものの、この愛想のなさでは新歓などに行っても話もしなさそうではある。めげずに話しかける者がいるなら答えはするだろうが、義勇は自分から話しかけるのが苦手なのだ。そもそもそんな場に行くこともなさそうだったし、行ったなどと聞いたこともなかった。
「まあ良いです。新歓に行くことがあったら迎えに来てください」
「水溜りに嵌まって帰れなくなってそうだな」
「そんなことはもうしてませんから」
実際義勇たちが卒業した後は、助けてくれる人がいなくなったので気を張って注意していた。そのおかげか学校内や登下校の際は水を被ることは少なくなった。傘を常備していたおかげで免れたこともある。
その分疲れて義勇と顔を合わせると気が抜けてしまっていたが、労ってくれるのでそれはそれで良しとしている。義勇のそばは落ち着くし、匂いも相変わらず嗅いでしまうのだが、それに関しては本人も諦めていた。
少し前に我が家となった冨岡の実家に到着し、しのぶは手を繋いだままリビングへと足を踏み入れた。平日である今日、蔦子は仕事なので夜まで帰ってこないが、定時で帰って卒業祝いをしてくれると言ってくれたし、カナエたちも来る。その前に結婚指輪を取りに行くことになっているのだ。
「ところで見納めですよ、女子高生の姿」
「ああ。……これ」
腰に手を当てて制服を見せびらかしていると、義勇の手がしのぶの胸元にあるリボンへと伸びた。ネクタイと違いホックで着けるタイプなので外し方がわからなかったのか、首を傾げてまごついている。
「欲しいんですか?」
「いや。結局ネクタイをつけてるところは見なかった」
あの時カナエが奪い取ったネクタイのお返しとして、まだ二年高校に通うしのぶはリボンを渡すことはできなかった。その代わりに物ではないものを欲しがられたのだが。
「見たかったんですか? 口で言ってくれれば自分で外すのに、何か助平です」
「そうか」
言い返さない辺り、自分が助平であると自覚しているらしい。別にしのぶは義勇が助平でも一向に構わないのだが、何を考えたのか相変わらず細部は読み取れない。
見たいなら取ってくると口にして、しのぶは義勇から離れて部屋へと戻り、インテリア化していたネクタイを持って戻ってきた。
「すぐ着替えますけどね。制服でお店入れなさそうですし」
頷きながら手慣れたようにネクタイを締めていく義勇の手元を眺めていると、何だか逆ではないのかとぼんやり考えてしまった。
新婚生活を一度は想像してしまったことがあるしのぶは、仕事に向かう夫のネクタイを締める朝というものを想像していた。夫婦逆になっているし朝ではなく帰りなのだが、まあこれはこれで楽しい。
「似合います?」
「可愛い」
スマートフォンを掲げ出した義勇にピースを向けながら、何で一人で写っているのかとふと虚しくなった。
自分を被写体に選ばない義勇のスマートフォンにはほぼしのぶが写っている。義勇が撮らない分蔦子が二人でいるところを撮っては送ってくるので、結局のところ枚数はあるのだが。
「ほら、もっと寄ってください」
二人きりで撮ったものは恥ずかしくて見せることはないのだが、愛想のない顔が笑みを収めさせてくれるので、これもひっそり枚数は増えていた。
*
「冨岡さんくらい美人だとやっぱ彼氏いるよねえ、結構長いの?」
新入生歓迎会と称したゼミの飲み会は和やかに始まった。
ゼミでの課題や講義の話、その他年頃の男女が集まれば自然と話題は色恋の話にも繋がっていく。誰に彼女がいて誰が彼氏募集中か。呼ばれる名字にまだ慣れないのだが、照れる素振りは何とか押し込めている。そんななか話を振られたしのぶは目を瞬いた。
「彼氏じゃないです」
「あ、もしかして彼氏いりませんアピールってやつ? 興味ない子とかやるらしいよね。薬指に指輪わざと嵌めて」
「えっ、嘘、冨岡さんフリーなの?」
「いえ、フリーではないですよ」
食いついた男子と不思議そうに首を傾げた女子。その様子を周りも聞いているようだった。ついでだから言っておこうとしのぶは口を開いた。
「結婚してるので」
喧騒がその座敷だけしんとして、他の団体の笑い声が聞こえた。その直後驚愕に染まる悲鳴のような声が上がり、そんなに驚くほどかと少々面食らった。
まあ確かに、周りでも学生結婚などしている者はいなかったが。知り合って日は浅いのだから、えーそうなんだ、くらいの軽さだと考えていた。
「冨岡さんと結婚できる羨ましい男ってどんな!?」
「学生結婚かー! えー、遊びたいとかないの? もっと良い出会いあるかもとか」
「あれ以上はちょっと、見当たらないんじゃないですかね」
口にしてから惚気のようになってしまったと自覚したが、女子陣の目が輝いたのがわかってしまった。女子というのは大抵恋の話が好きだ。しのぶもカナエの影響で割と少女漫画は嗜んでいたし、義姉も割と夢見がちだったりする。
「しれっと惚気るねえ。冨岡さん結構愉快な人だな?」
「旦那さんの話聞きたい! どこで出会ったの、高校?」
「あー、はい。高校の先輩です」
「甘酸っぱい青春じゃん! 先輩とか一番憧れる」
苦々しい思い出も多いが、まあ甘酸っぱいこともしてきたとは思う。普通の先輩と後輩という仲ではなかったことは確かだが、その分他では有り得ない経験もしてきた。風呂に突撃するとか、何の感慨も持たれなかったファーストキスとか。苦い思い出を思い出してしまった。
「どんな人なの? 格好良い? 写真とかないの?」
「うーん。ああ、この間撮ったものなら」
少し前に四人で出かけた時に撮ったものがあった。義勇は放っておけばすぐしのぶばかり撮ろうとするし、呼びかけなければ自分が写ろうとしない。四人でどこかに行って記念に撮ろうとしてもカメラマンになろうとするのだ。まあ不死川も同様なので奪い合いになることも多々ある。
この時は通行人に頼んで四人の写真を収め、知らぬ間にカナエが撮っていたしのぶと写る写真が送られていたのを思い出した。
可愛かったから、と悪びれずに言って送られてきたのは、一つの大きなパフェを二人でつついているものだった。
気づいていなかったのだから目線すらパフェに集中して、何なら二人とも真剣な顔で美味しそうにも見えないものだ。どこが可愛かったのだろうとしのぶはまだ疑問だった。
減らないパフェに躍起になっていたのは覚えているが、あれはもはや戦いだった。
「うわあ。期待を裏切らないね、冨岡さん」
「どういう意味ですそれ」
あまり良い感情とは思えない感嘆詞を溢されたが、画像を覗き込む女子から黄色い声が聞こえてくる。表面上はひっそりしていた高校当時の義勇周りの女子たちも、裏ではこうしてはしゃいでいたのかもしれない。
抜け駆け禁止とか協定とか、色んな決まりがあったのかもしれないが、しのぶはそれを全部知らずに近づいていた。あったとしても素直に守ったとは思わないが。
「まあでもそうだよ、良い男も良い女も学生のうちに相手なんて見つかるし。周りが放っとかないからね。さっさと結婚するのは正しい」
「旦那さん刺されないようにしないとまずいんじゃないか?」
「そうだね。まあ誰も刺さない気がするけど」
元水泳部で力もあるとはいえ、襲われるようなことがあったら少々心配ではあるが、そちらよりもしのぶの体質と告白にばかり気が行って自分のことには無頓着だ。もっと自覚していればもう少し違うかもしれないが、それはもう義勇ではないような気もする。
「新婚生活って同棲とも違うよね多分。楽しい?」
二人きりの生活ではない。まだ学生の身分であるしのぶたちは、両家族から援助を受けつつ蔦子と同居し始めている。義勇がしているのだからしのぶもアルバイトをすると名乗りを上げたのだが、絶対にやめろと二人からも自身の姉からも止められている。まあ仕方ない。正直自分のためだけならばやろうとも思わないだろう。
その分家事は頑張っているつもりだった。それに水を被る危険のない在宅のようなアルバイトならできるのではと探しているのだ。
「楽しいですよ。義理の家族も優しいですし」
相変わらずしのぶを妖怪だと思い込んだままではあるが、それでも蔦子は受け入れてくれるのだ。
「お待たせしました」
車の窓を叩く音に顔に被せていた本をずらし、視線を向けると笑みを浮かべたしのぶが立っていた。
ロックを外してドアを開けた時、背後にこちらを窺う数人の目があることに気がついた。
歓迎会の参加メンバーなのだろう、結婚していることを伝え、迎えが来ると言ったらついてきたらしい。相変わらず人を惹き付けて来る奴だ。
「じゃあ、お疲れ様でした」
会釈をして助手席に乗り込んだしのぶがシートベルトをセットするのを確認し、道路脇に停めていた車を発進させた。
「期待を裏切らないと言われました。義勇さんの写真見せた時」
「どういう意味だ?」
「さあ、何でしょうね。大体わかりますけど」
しのぶには意味が理解できるらしい。その場にいなかった義勇にはわからないが、今日は楽しかったようだ。こちらとしては心配していたのだが、問題なく帰ってきたので良しとする。どこぞのサークルなどに所属して変なことに巻き込まれないのならそれで良い。あとは義勇のいないところで水を被らなければそれで。
「はあ、そういえばもう明日は第三土曜日ですね。いい加減あの取り決めなくしません?」
「姉さんも喜ぶし、俺も楽しい」
「楽しまないでくださいよ……」
渋っているが決められたことは一応了承しているので、今の文句はただ口にするだけの挨拶のようなものだ。明日は蔦子も早く帰ると言っていたし、義勇も段々楽しくなっていた。
毎月の第三土曜日、しのぶは猫の姿で一日過ごすことが結婚前から決まっている。それは蔦子が触らせてほしいと頼んで、義勇もついでに触りたいと名乗りを上げたからである。悩んだしのぶはカナエに相談し、不死川にお願いしていることがあるのだと教えられたらしい。それが月一回水を被ったまま一日過ごすというものだった。
妹と違い動物好きな姉は、飼えない代わりに不死川を堪能することにしたそうだ。毛皮を纏っていても真っ赤になっていたのがわかったとしのぶから聞いた。
まだそんなに照れるのかと呆れるやら微笑ましいやら。しのぶは不死川ほど照れることはなくなってしまい義勇も少々寂しかった。だからというわけではないが、義勇は一日猫になっているしのぶを構い倒すことを月課とすることにしたのだ。尻尾の付け根も触って良いと許可を得ているので。
「錆兎は猫の腹に顔を埋めてもふもふするらしい」
「……言っておきますけど、蔦子さんはもっと控えめな触り方ですからね。遠慮がなくなり過ぎですよ。先月はずっと付け根ばっかり狙って」
「嫌ならそう言え。できるだけしないようにする」
親しき仲にも礼儀ありというし、遠慮がなくなり過ぎて愛想を尽かされるのも困る。先月は確かに尻尾の付け根ばかり触り過ぎたのか、溶けてでもいるのかと思うほどくたくたになったしのぶはしばらく動かなかった。風呂から上がって来た後、一言変態と吐き捨てられたが。
「嫌とは言ってないですけど」
「そうか。もっと触って良いんだな」
「限度があるんです! もう少しこうインターバルを置いて」
「成程」
本物の猫もきっとしつこい撫で方を嫌がるのだろうな、とぼんやり考えながら義勇は帰路を走らせた。
*
「あらまあ、すっかり慣れちゃって」
翌日の第三土曜日、顔にしのぶを貼り付けたまま出迎えた義勇を見てカナエはおかしそうに笑っていた。
猫の日を月に一度作っていることを聞いていても今日がその日だと知らなかったらしく、不死川などは口元を引き攣らせて義勇を見た。
尻尾の付け根は今日は触らず、友人が言っていたことを実践するためにしのぶの腹に顔を埋めていたところだった。至福の時だと言っていた友人を理解することは一生ないと以前ならば思っただろうが、今は正直わかる気がする。
にゃあにゃあ喚くしのぶを顔から剥がすと、腕を伝って肩へと落ち着いた。
意外と高いところが好きらしい。義勇が立っている時はずっと肩に乗っているか背中に張り付いたりする。そういえば高校の頃は視界が高いと喜んでいた。
「義勇くん、実弥くんのことも平気になったんじゃない?」
「犬は無理だ」
「月一で触ってんのは猫だしなァ」
不死川が犬の姿で義勇の前に現れたのは何度かあるが、相手が不死川だとわかっていても体が硬直するのだ。流石に同居していれば慣れるかもしれないが、できれば近寄りたくはない。
「猫もしのぶしか無理」
「やっぱりそうなのね。それはそれで可愛いけど。良かったわねしのぶ、嫌われなくて」
義勇の肩に乗るしのぶの頭を撫でながらカナエが笑う。
「昔は嫌だってずっと嘆いてたけど、義勇くんにばれてからは言わなくなったからね。本当に良かったわ、ばれたのがしのぶの好きになった人で。ちょっと、騒がしいわよしのぶ」
先程喚いた時とは比べものにならないほどぎゃんぎゃんと騒ぎ出したしのぶを軽くあしらうカナエを眺めながら、不死川もまた呆れたような顔を見せた。
しのぶが義勇を好きだというのは、義勇も大体理解しているししのぶは隠さなくなっていたが、カナエに指摘されたことと不死川が聞いていることが恥ずかしかったのだろう。この反応では不死川も普通に以前から知っていたのだろうとは思うが、良く女心の話をしてくるのでそこに気を遣えと言いたいのかもしれない。
とりあえず、しのぶの機嫌は後で義勇が取ることにして、今は遊びに来た二人をもてなすことにした。
*
「え、彼女できたの? 冨岡」
講義室で錆兎と頭を突き合わせて課題をやっていた時、数人の男女グループに声をかけられた。
義勇の近況を知っている錆兎はちらりとこちらへ目を向けたが、流石に自分が口にすることではないと考えたのだろう、義勇が答えるのを待っていた。
「彼女じゃない」
「えー意外、ファッションでそこに指輪つける人だったの? 冨岡くんて」
「これは結婚指輪」
何故かしのぶの言ったとおり、義勇に指輪の話を振ってくる者が現れるとは思わなかった。唖然とした数人の男女は二の句を告げなくなるほど驚いたらしい。そこまで驚くことかと錆兎へ視線を向けるが、そういえば錆兎も最初は驚いていた。まあすぐに気を取り直して祝いの言葉を伝えてくれたのだが。
「結婚とか聞いてない!」
「まじかー、そう来るとはなあ」
疑問符を掲げて首を傾げると、何でもないと口にした男子が相手はどんな人なのかと問いかけてきて、写真が見たいと言われ少々気後れしてしまった。大して話したこともなかった気がしたが、まあ同じゼミの知り合いが学生結婚などしていては気になるのかもしれない。
とはいえ仲が良かったかといわれるとそうでもない気がするので、あまり見せたくはないのだが仕方ない。
「ちょっと待った。制服の女子が見えた。もしかして嫁さん女子高生?」
「いや、卒業した。今大学」
「うおーっ! めっちゃ可愛い! こりゃ駄目だわ。あ、いや凄え可愛いからさあ」
駄目とは何がだろうかと訝しんだ義勇の視線に気づいたのか、一人の男子が慌てたように一言付け足した。凄く可愛いと何が駄目なのか結局わからないのだが、見せる前に見られた画面を指して騒いだ男子につられるように不機嫌そうな女子が覗き込み、溜息を吐いた時肩を叩く様子を眺めた。
「学祭とか連れてくる?」
「さあ……来たければ来ると思う」
「来たら紹介してくれよ、冨岡の嫁さん。ほら行くぞ」
義勇がいればプールや海以外なら遊びに行きたがるようにもなったし、呼べば来るかもしれないけれど。
怒っているような空気を醸し出したやけに落ち着きのない女子を引っ張って離れた団体を見送り、結局何しに来たのかわからないまま錆兎と目を見合わせてしまった。