会議にて
何たる体たらくだと、恐らく冨岡も煉獄と同じように感じていることだろう。
熾烈な実力はともかく、冨岡自身の性格は静かで穏やか、煉獄とは正反対にも思えるが、芯の部分で似通うところがあると煉獄は思っていた。こんな失態を犯してしまえば恐らく柱の全員がそう感じるだろうとは思っているが。
猗窩座が消えた後、煉獄は不覚にも気を失ったが、冨岡もまた意識を手放していたらしい。
隠に運ばれる間際にふと起きると、蝶屋敷に行くことを渋ったという。柱であるこちらが言ったことに対して隠は滅多に否を言わないが、問答無用で連れられてきたそうだ。
当然だな。往生際の悪かった冨岡は今は大人しく隣の寝台でぼんやりしていた。蝶屋敷の面々に心配をかけたくないのはわかったが、傷を見せなければ更に彼らは心配するだろうに。
「きみの凪は万能だな。あれがなければ確実に俺かきみのどちらかは死んでいただろう」
攻撃を防ぐ型というのは、煉獄が知る呼吸の中でも凪しか見たことがなかった。冨岡が必要だと感じ、なくてはならなくなった水の呼吸の拾壱ノ型。
猿真似だ何だと父は煉獄に恨み言を聞かせていたが、目の当たりにしてしまった。
その猿真似に煉獄は助けられた。本物でなかろうと関係ないのだ。
「お前がいなければ防戦一方だった」
そうだろうか。冨岡は充分攻撃を仕掛けていたように思う。彼は煉獄も驚くほど目標値が高いので、猗窩座のことも殺す以外の結果は残したくなかったのだろう。煉獄とてできることならばそうしたい。皆そうだろうとは思うが。
「だが、連携は上手くいったのではないか? 稽古に参加し始めてから約五年か。連携できなければ逆に何をしていたのか不思議な期間だな」
「……そうだな」
透き通る世界を視たことも関係しているだろう。冨岡とは長年の鍛錬が実を結んだのもあるのだろうが、彼だけではなく猗窩座の動きも少しだが先読みできた。
常時視るとまではいわないが、せめて戦闘時すぐに視えるように、視えたり視えなかったりというような不安定さをできるだけ減らしておかなければならないだろう。恐らく冨岡は視ようとして視ているのだろうし。
片目を潰されても透き通る世界であれば視えるはずだ。盲目の悲鳴嶼が視えたのだから。……まあ、悲鳴嶼ほどの者でなければ駄目だということも考えられるが、やってみなければわからない。
「内臓はどうなんだ」
「む。……まあ、そのうち治る」
煉獄からしても昨夜の冨岡の動きは尋常ではなかった。人を守りながら被弾が煉獄より少ないのはさすがである。
それはともかく、彼には煉獄の内臓が視えていたのだろう。肺に傷がついたわけではないので呼吸に問題はないが、隊士として復帰するには時間を要するのではないかと自己診断した。
「以前のようには戦えないかもしれないが、足手まといにはならないよう努力しよう」
せめて彼らの邪魔にならないように。恐らく戦いから離脱していった者たちにも、そう考えていたことがあるだろう。辞めても残っても足手まといになるのではないかと考えてしまうような。
戦いが嫌いだと口にした冨岡の気持ちはよくわかる。
いつも何かしら奪われていく。自信、誇り、体、命を。
今回命を落とす者は誰もおらず、煉獄は乗客を、冨岡はあの二人と煉獄を守った。だがそれは今回だったから生きていただけだ。次に猗窩座と相対すれば、結果などどうなるかはわからない。
ままならない。永遠に続く鬼ごっこだ。鬼狩りが捕まえれば鬼を殺し、捕まれば人は喰われる。この長きに渡る戦いを見届けてきた産屋敷の当主たちは、どれほどの想いで隊士たちを送り出していたのか。
息を吐いた時、控えめに扉を叩く音が聞こえ、返事を待たずに扉は開いた。
「加減はどうだ……」
「俺は問題ありません」
「むう。内臓を傷めていますが、リハビリ次第では復帰も可能ではないかと」
現れたのは悲鳴嶼だった。
冨岡はさっさと怪我が治れば復帰可能であることを伝え、それが煉獄は重傷であると暗に言われているように聞こえて少し眉根を寄せてしまった。事実なので仕方ないのだが。
「起きたばかりですまないが、柱合会議は七日後にある。上弦の鬼との接触から帰還したのはこの四年余りで我々とお前たちだけだ。取り逃がしたことも踏まえて対策を練らなければ……」
「……はい」
「……生きて戻ったことは喜ばしい。今は少しでも回復に努めることだ」
煉獄と冨岡、二人の頭に手を乗せて悲鳴嶼は労った。
人に頭を撫でてもらうなど何年ぶりだろうか。大きな手が温かさを伝え、驚いて固まっている間に悲鳴嶼は去っていった。どうやら柱合会議の日程と怪我の様子を見に来ただけのようだ。
隣へ目を向けると、表情はなくとも喜んでいるらしい冨岡がいる。
この後ろ向きな冨岡を前へ向かせるのは悲鳴嶼の仕事なのか、それとも彼が冨岡の扱いを心得ているだけか。昔馴染みの者たちも軽々扱っていたような気がする。子供扱いされた煉獄は少し気恥ずかしかったが、頭を撫でられて喜ぶ冨岡の気持ちも少し理解できてしまっていた。
「頸を斬っても死ななかっただと?」
任務報告と称した柱合会議で、鴉と煉獄たちからの報告を受けての議題は上弦の弐の特異な体質についてだった。
日輪刀で頸を斬り落としたにも関わらず体は彷徨うように動き続け、あまつさえ血鬼術を使役して攻撃を繰り出してきたらしい。そして夜明けの光が届く前に猗窩座は消えたという。
二人の隊士――嘴平伊之助は文字が書けないらしく口伝てに、報告書は竈門炭治郎からのみだが――からも同様の報告を受けているようだった。
二百人もの人質を取った上弦の陸、魘夢は汽車と同化するなどという所業をしでかしたが、やはり上弦の中でも力の差は顕著にあるようだ。数字が小さいほど強いのだろうが、陸と弐では報告上でも雲泥の差だった。
「ひと晩で上弦と二体遭遇、片方はきちんと殺せたわけだが……」
「チッ。何で俺は遭遇しねェんだよォ」
「遭遇率の差が酷えな」
「取り逃がしたとしても情報を持ち帰ることができたのだから今はそれで納得すべきだろう……」
悲鳴嶼の擁護とも取れる言葉がその場に響く。そのついでとでもいうように煉獄は口を開いた。
「上弦の陸との戦いで俺が見たのは、鬼の娘が人を守りながら戦っていた姿だ」
乗客を守り、血を流しながら戦う姿。竈門炭治郎及び禰豆子を煉獄は隊士として認めるという。
煉獄は元々自らの目で見たものを信じると言っていた。不死川の顔があからさまに歪んだ。
「しかし、冨岡と煉獄がいて尚倒しきれない鬼か……頸を斬っても動いたってことは、太陽じゃなきゃ死なねえのかね」
「本体じゃなかったとかねェのかァ?」
「……頸が落ちた後、再生しようと蠢いていた。あれ以外に気配もなかった」
「毒で死ぬ可能性は?」
「日輪刀が効かなくて毒が効くというのも何だか妙な気がしますが、可能性はなくはないでしょう。ただ、どれ程の猛毒を使えば死ぬのかはわかりませんね」
陽光に抗える鬼がいないから鬼舞辻無惨も隠れているのだろうし、確実に殺せるのは太陽に晒すことだろう。毒で動きを封じて朝まで拘束ができれば殺せるのではないかと思うが、その動きを封じて拘束している間が命懸けである。結局のところやることは変わらないのだ。
「ところで、最近姉が異様に楽しそうなんです」
会議も終わり、ふらりと去っていった時透を捕まえ損ね、これから蝶屋敷に戻る冨岡と煉獄が同時に胡蝶へ振り向いた。
こんな仕事だ、楽しそうなら良いと思うが、異様というのは気になった。別に宇髄に話すつもりはなく、悲鳴嶼や冨岡のような昔馴染みに話しかけたのだろうが、実はまだ近くにいた他の面々も興味津々だった。特に甘露寺と、隠しているようだが不死川が。
「元々よく笑う人ですけど、どちらかといえば浮かれてるような……」
「良いことでもあったのでは?」
首を傾げて煉獄が答えると、納得がいかないような顔をしつつ、胡蝶はそれだけならいいのだがと呟いた。
「……春でも来たか」
「え、いえ、それはないかと」
悲鳴嶼の呟きに胡蝶は顔を上げて否定した。何とも複雑な表情を見せたが、まあ姉妹で何か知っていることはあるのだろう。
春が来ても宇髄としては良いと思うが、蝶屋敷の主人である胡蝶カナエは、何せ憧れる者が多いと聞く。菩薩のような微笑みと優しさで手当されている時は至福なのだと。
胡蝶は困ったように冨岡を見上げたので、何か知っているのかと宇髄はぼんやり冨岡へ目を向けた。当の本人は悲鳴嶼を見ていたが、何を考えているのかよくわからない顔をしていた。
「どうかね。年齢的にも好い人ってのはいたっておかしくねえだろうし、楽しそうなら可能性もあんじゃねえの?」
そういえば昔、胡蝶カナエには好い人というものがいたのではなかったか。はっきり聞いてはいなかった気がするが、反応は明らかにそうだった。随分前のことだから変わったのかもしれないが。
それとも長年の片想いか何かを成就させたとか。あれが片想いなどというのも派手に首を傾げる話ではあるが、鬼殺隊のように普通の生活をするのが難しい場合なんかは片想いになってもおかしくはない。
「あいつに憧れる奴も多いみたいだし……治療に来た隊士と懇ろになってたりとか、」
「姉さんはそんなあばずれじゃありません!」
「ふざけんな宇髄ィ!」
「きゃー! そんなのはしたないわ!」
三者三様、全く違う言葉を同時に叫んだ胡蝶、不死川、甘露寺。女二人はともかく、やはり不死川が騒ぐのは何かおかしい。
さてはカナエに懸想していたか。こいつも一介の男だったようだ。いや。
「まさかお前が好い人か?」
「はァ!?」
宇髄の言葉は人の注目を集めることに二度も成功していた。
嬉々とした様子で宇髄を見た悲鳴嶼と甘露寺、やっぱり何を考えているのかわからない顔を向けた冨岡、そして物凄い形相で宇髄を睨みつけた胡蝶がいた。煉獄と伊黒は興味があるのかないのか、様子を窺うことにしたようだ。
「何で不死川さんが出てくるんです!」
「いやあ、今の反応は疑っちまうだろ? 蝶屋敷手伝い出してから結構話してんの見るしさあ、仲良さげじゃん」
「仲の良さでいったら義勇さんのほうが仲良いですから!」
「え?」
何故自分の名前が出てきたのか。
全く読めなかった表情が今ははっきりとそう伝えてくる。
昔馴染みなのだからそれはそうなのだろうが、冨岡とカナエにそういった気配があったかというと宇髄にはわからなかった。ぽかんとした悲鳴嶼を視界に入れた時、彼は物凄く複雑そうな表情をして涙を流した。一体何なんだ。
「……何で俺が出てくるんだ? 仲の良さは悲鳴嶼さんが一番だろう」
「別に、理由なんてないです。悲鳴嶼さんが一番仲良いのも同意はしますが」
「私こそ話題に出るのはおかしいだろう……」
昔馴染みの面々が何だか妙な感じになっている。
しかめ面をしているがどこか気を遣っているような気配を醸す胡蝶と、全くもって身に覚えがないらしい冨岡。そして突然矢面に立たされた悲鳴嶼だ。
「えーっとつまり、冨岡は胡蝶の姉とできてんの?」
「できてない」
「カナエさんのことはどう思ってるのかしら!?」
このよく晴れた天気の中、素面で聞くような話ではないことはわかっているのだが、この三人の中で変に拗れている気がして、何だか助け舟を出してやらねばならないような気がしたのだ。別に面白がっているわけではない。甘露寺は間違いなく期待しているが。
「どう……? 凄いと思う」
ぼんやりした答えだ。そんなことはこの場の全員わかっていることだが、冨岡のことだから本当にそれしか考えていない可能性があった。不死川が肩透かしを食らったような顔をしていた。
「これと懇ろとか有り得ねえわな」
「直接的過ぎるぞ貴様。少しは言葉を選べ、甘露寺の前だ」
真っ赤になった甘露寺が恥ずかしそうに顔を隠したが、こいつはこういう恋の話が大好きだった。如何わしい単語に照れても気にはなる。まあ、年頃の娘は恐らくそんなものなのだろう。胡蝶はどうにも納得がいっていないような顔をしているが。
「まあ、冨岡がどうとも思ってないなら違うんだろう。では相手は不死川か?」
「違ェわ!」
「どうとも思ってないわけじゃない。凄いと思う」
「凄い以外のことを言えやァ!」
「おい、そんな話ここでやる必要ないだろ。せめて二人を蝶屋敷に戻らせてやれ。煉獄も乗るな、冨岡はつまらんことを言い返すな」
伊黒の言葉でそういえば冨岡と煉獄は怪我人だったのだと思い出し、ほぼ治っていると呟く冨岡は無視してこの話をお開きにすることにした。
「……カナエのことが好きなら遠慮せず言うといい」
「何だ、結局好きなのか? 言ってしまえばよかったのに。皆応援してくれるだろう」
「………。そういう目で見たことはないです」
随分前に悲鳴嶼は義勇へ、不死川の気持ちを意図せず漏らしてしまったことがある。
義勇から誰かに恋慕するような気配を悲鳴嶼は感じたことがなかったが、もしや隠していたのではないかと心配になったのだ。
異性の中で一番義勇と仲が良いのはしのぶだ。そのしのぶ相手にも義勇は恋のように浮ついた感情を抱いているようには見えなかった。もしかして悲鳴嶼には見えないだけで、本当はカナエを慕っていたのでは、と考えた。
だが、やはり義勇は否定した。嘘を吐かない子であることはよくよく理解しているので、そう言われると本当に恋ではないのだろうと思えるが。
「そうか! なら必要ないな」
「そうですかね……」
しのぶはどうやら疑っているらしい。というより、何か決定的なものでも見たかのような疑いぶりだ。悲鳴嶼には見えないものがしのぶに見えているのなら、それはそれで微笑ましく見守りたい関係ではあるのだが、如何せん義勇の想い人がしのぶではなくカナエだという疑惑を、恐らくしのぶは持っているのだろう。
まあ別に、義勇がカナエを好きになっても構わないとは思う。
確かに不死川はカナエを想っているが、それを理由に義勇が諦めるなどということはあってはならない。義勇の相手は悲鳴嶼も厳選するつもりでいたが、カナエならば却下するようなことは有り得ないのだ。
義勇の相手は義勇をきちんと理解し、立ててくれ、包み込んでくれる家柄の良い娘でなければならないと思っている。性格は少し勝ち気ではあるが、それは仲が良かったしのぶを想定して言ったことだった。だがカナエもまたそれに当て嵌まってしまうのだ。
カナエが義勇を好きならば、不死川の想いは確かに日の目を見ない。だが義勇がカナエを好きになれば、二人を祝福するつもりは悲鳴嶼にはあった。
「………。ちょっと来い」
「む、何ですか」
義勇はしのぶの腕を掴んで悲鳴嶼と煉獄から距離を取った。離れた場所で立ち止まり、何やら不穏な空気がしている。しばらくしてまた妙な空気のまま二人は戻ってきた。
「もう、知らないって言ってるのに」
どこか悲しげにも感じるしのぶの気配に、悲鳴嶼はようやく一つの仮定に辿り着いた。
しのぶは自覚していて、本当は義勇のことが好きなのではないか。
だが義勇自身の想い人は姉のカナエ(仮)。そんな状態で自分の想いを口にすることもできず、応援するためにこんな話を言い出したのかもしれない。
その割にしのぶと義勇はまるで友や兄妹のような空気だったが、二人とも平静を装っていたとすれば、悲鳴嶼には汲み取れないのもとりあえずは納得できる。
本当に恋を隠しているのか、二人を見ていると正直首を傾げるところではあるが。
まあ、とりあえず。色々と複雑になっているのだろう。悲鳴嶼は少し様子を見ることにした。
「あいつは何か勘違いをしてる」
「胡蝶か? 何やら思い詰めたような表情だったな」
蝶屋敷に戻り二人仲良く並んでベッドに押し込められた後、冨岡はぼんやりと昼間のやり取りについて文句を口にした。
胡蝶が何を知っていてあんな態度だったのか、煉獄にはいまいち理解が及んでいない。長年知っている冨岡が言うには、何かを勘違いして気を遣っているっぽい、ということだそうだ。
「その勘違いは何なのかわかったのか?」
「口を割らなかった。たぶん碌なことじゃない」
「ふむ、胡蝶が考える碌でもないこととは気になるが、推測は?」
長年を知る昔馴染みだ、冨岡にもそれなりに予想はあるだろうと思い煉獄が問いかけると、しばらく黙り込んだあと小さな声が部屋に響いた。
「……たぶんだが、俺がカナエを好きなんだと勘違いしてる」
「勘違いなのかそれは?」
「ああ」
「そうか。確かにきみは昼間からそう言ってたな。胡蝶は何故そんな勘違いを? 思わせぶりな態度でも見せたか」
「してない。わからん」
本当にわからないらしい。
カナエに気のある素振りをしたこともなければ、しのぶにそんな話をした覚えもない。そもそもそういう意味で好きにはならないことをしのぶはよく知っているはず、なのだそうだ。
「何とも不思議だな。きみが胡蝶の姉君を好きになる可能性は本当にないのか?」
「ない。カナエも同様だ」
「随分はっきり言い切るな。それは何か裏付けがあるのか?」
「ある。しのぶも知ってる」
ますますよくわからない勘違いだった。胡蝶の姉を冨岡が好きにならないことも、彼女が冨岡を好きにならないことも決まっているという。それを胡蝶も知っているのに、冨岡が胡蝶の姉に焦がれているなどという勘違いが発生している。
「きみの推測が違う可能性はどうだ?」
「……間違ってるかもしれないが」
「まあ、本人が口を割らなければわからない問題だしな。ふむ、難しいな!」
煉獄にとっては面妖である。特に仲違いしたというわけではないようなので、さほど気にせずともそのうち解決しそうではあるが、胡蝶の勘違いが長い間あったものだったとしたら、凝り固まった考えのまま変わらないかもしれない。その辺はもうどうしようもない。冨岡が頑張って誤解を解くしかないだろう。
「……何でこんな話に時間を取られなければならないんだ……」
「まあいいんじゃないか? 整理していくとなかなか興味深いことになっている。……きみは根を詰め過ぎるきらいがあるからな、たまの息抜きだ」
「……そんなのは皆そうだろう」
「そうだとも。だからこそこうした何でもない会話が必要なんだ」
冨岡にとっても、煉獄にとっても。
内容などは何だっていい。ただ日々の普通の暮らしのような会話が少しでもできればいい。この戦いばかりの日々に、息をつける何かがあれば。